ミズキユウタ30歳による、映画や音楽やお笑い芸人やその他イロイロについて思ったことと&何気ない日常を綴るブログです。


by hotel_rwanda
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

『世界一の映画館と日本一のフランス料理店を~』 岡田芳郎

ここ数年「なぜ○○は××なのか」というタイトルの本がやたら増えた気がするけれど(そういう類の本は『若者はなぜ3年で辞めるのか』以外読んだことがないけれど)、インパクトの強さでこれに勝るものはないのではなかろうか。

ということで、タイトルに惹かれ、岡田芳郎・著 『世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田市につくった男はなぜ忘れ去られたのか』を読んだ。

いま自分に何かしらの小説、漫画、ドラマを映画化する権利が与えられていたら、迷わずこれを選ぶ。

山形県酒田市の名家に生まれ、20歳にして父親が経営していた映画館‘グリーンハウス’の支配人となった‘佐藤久一’の半生を追ったノンフィクション。数々の伝説的なサービスと興行を積み重ね、山形県酒田市内の数ある映画館のうちの一つに過ぎなかった‘グリーンハウス’を、淀川長治をして「世界一の映画館」と言わしめるまでにしたのち、「お客様へのおもてなし」を更に追及する久一は、「今度は映像(映画)よりももっと臨場感のあるナマの舞台(演劇)で!」と、一念発起。上京して日生劇場で働くことになる。

が、ひょんなことからその日生劇場の‘食堂課’に配属され、それをきっかけに、故郷・酒田に戻ってフランス料理店を経営することになった久一。映画館時代と同様に、徹底的に‘お客様目線’に立ち、ときに‘やり過ぎ’レベルまでやってしまう久一のサービス精神とエンターテイナーとしての素質。気がつけば、その店は開高健や丸谷才一から「日本一のフランス料理店」と賞賛されるまでになる。

が、「お客様へのサービス」に気をとられ採算を度外視した久一の経営は、最終的には手にした名声を遥かに超える‘赤字’という現実を彼に突きつける。更に‘グリーンハウス’からの出火によって酒田市全体を焼き尽くした大火事‘酒田大火’が街の人々に残す忌まわしい記憶。久一が晩年に陥ったアルコール依存症。純粋すぎるがゆえ、余計に苦しむことになった‘愛人’と‘妻’との間の三角関係。

などなど、まるでスコセッシの映画(というか『アビエーター』)のような、‘狂気と情熱の間で揺れ続けた濃い半生’が、70歳を超える著者の丁寧な語り口で綴られていく。タイトルを聞いたときは「映画館」と「フランス料理店」という2つに全く繋がりを感じなかったのだけど、読み終えると、「お客様へ最上級のおもてなし(サービス)を提供する」という意味で、その2つは根っこで繋がっていたのだと痛感。そして、そうすることを自分自身の最大の喜びとして、強い信念を持ちつつも、ある意味では常に‘成り行き任せ’な久一の生き方は、はっきりいって凄くカッコイイ。

映画館でもコンビニでも牛丼屋でも高級ホテルでも、‘接客’に従ずる人間は全員必読の一冊だと思う。

それにしても映画館の支配人時代に、まさかのちに自分が「日本一のフランス料理店」の経営者になるなんて夢にも思っていなかっただろう。

いやあ、人生はホント何が起こるか分からないなあ!

と思わせてくれる物語は何であれやっぱり素晴らしい。
[PR]
by hotel_rwanda | 2008-04-30 23:50 | BOOKS